皆既日食から学ぶ「ラプラスの魔物」

皆既日食から学ぶ「ラプラスの魔物」


 2009年7月22日、日本の一部で皆既日食が見られます。

何故、こんな未来のことが正確に予言できるのでしょうか?天体の未来がわかるのであれば、私たちの未来も正確に予言できてしまうのでしょうか?

物理学の世界では「ラプラスの魔物」という、私たちの未来を予言できる魔物が知られています。誰も自分の未来を知りたくはありません。「ラプラスの魔物」とはどんな魔物なのか、ちょっと調べてみましょう。

2009/06/26 牟田淳
作成中


皆既日食の日時が正確にわかるわけ

2009年7月22日、日本の一部で皆既日食が見られます。皆既日食はいつ、どこで起こるかが正確に予言できます。たとえば国立天文台のホームページによれば、
http://www.nao.ac.jp/phenomena/20090722/index.html


東京:日食のはじめ 9時55分33秒 日食の終わり 12時30分20秒
奄美:皆既日食のはじめ 10時55分58秒 皆既日食の終わり 10時57分48秒

と秒単位で正確にわかっています。
何故こんなに正確にわかるのでしょう?
実は日食は太陽、地球、月の位置の関係で、地球から見てちょうど月が太陽を隠してしまう時に起きます。つまり、地球、太陽、月の動きが分かれば日食がいつ起こるかがわかるのです。それではどうやって太陽、月、地球の位置がわかるのでしょうか?


太陽、地球、月の動きは「ニュートンの運動の3法則」によって計算できるのです。その3法則とは

1 慣性の法則
2 運動方程式 質量×加速度=力
3 作用・反作用の法則
この3つだけです。
こんな簡単なたった3つの法則だけで、太陽、月、地球の動きは決まってしまうのです。しかも地球の周りにはそんなに惑星の数はありません。それで結構正確に地球、月、太陽の動きを計算して予言できるのです。

わたしたちの未来はどれくらい正確にわかる?

月、地球、太陽の動きを正確に計算して未来を正確に予言できるのであれば、私たちの未来はどれくらい正確にわかるのでしょう?

私たちは「分子」の集まりでできています。この分子の動きも「ニュートンの3法則」に従って運動するとします。そうすると、分子の動きも地球、太陽、月と同じように計算できる、つまり分子の未来はわかってしまうわけです。

分子の未来がわかってしまうのならば、私たちは分子の集まりですから、私たちの未来もわかってしまっているということになります。つまり、私たちの未来はすべて決定しているというわけです。

ラプラスの魔物

このニュートン力学の結果は衝撃的です。この「未来がすべて決定している」ということについてはWikipediaや色々な力学の本に「ラプラスの魔物」として紹介されていますが、ここでは有名な湯川秀樹先生の文を紹介します。

未来は、一体どこまできまっており、どの程度まで予測可能なのであろうか。十九世紀の初頭に、ラプラスという科学者は、未来は実は細部まで決定ずみだと主張した。現実世界を形づくるすべての物質は、ニュートン力学の法則に従って運動するはずだから、現在の物質の配置と各部分の速度がきまっている以上、未来もまた一義的に決定されていると考えざるを得ない、というのである。だから、世界の現状に関する情報を、くまなく収集する能力と、このデータを使って、全物質系に対するニュートンの運動方程式を解く能力とをもつ超人にとっては、未来はすっかりわかってしまっていることになる。この「ラプラスの魔」とちがって、人間が未来を知らないのは、情報収集能力も計算能力も貧弱だからだ、ということになる。  
             湯川秀樹 「湯川秀樹自選集 第四巻 創造の世界」1971年


つまり、ラプラスの魔物とは、「現在の状況から運動方程式を使ってすべての未来を知っている」魔物ということになります。自分の未来を占い師ではなく、自然科学の観点から予言されたらとっても嫌ですね。まさに魔物です。


このような未来がすべて決定しているという考え方は決定論的な考え方です。自分の未来が、あたかも映画のフィルムを再生するがごとくすべて決まったことを体験しているだけだとしたらいやですね。


20世紀になって、『量子力学』が誕生します。この決定論的な考え方はどうなっていくのでしょう?

続きは

「アートのための数学 牟田淳著、オーム社」(ここをクリック)

192ページあたりに書いておきました。よろしくね。












参考資料

参考文献

(0)「アートのための数学」,牟田淳著,オーム社,2008
(1) 「湯川秀樹自選集 第4巻 創造の世界」、湯川秀樹著、1971
(2)Wikipedia

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